先生方へ

日本語を教えていらっしゃる先生方へ

初めて日本語を勉強する非漢字圏の学習者にとって、漢字は未知の世界です。学習者がその新しい世界へ足を踏み入れる時、教師が漢字の歴史や書き方の基本原則、部首などを詳しく教えるために充分時間を取ることができれば理想的ですが、きちんと決められているカリキュラムをこなすために、初級で教えるべき文法事項や語彙などを教える方に重点が置かれてしまい、なかなか漢字を教えるために充分な時間を割くことができないのが現状ではないでしょうか。そのような漢字教育の現状を改善すべく、学習者にとっても教師にとっても便利なオンラインの漢字教材Kanji alive を2002年に作りました。

Kanji aliveを使うことによって、授業中は 学生の漢字の修得度をチェックするだけで済み、他の時間はすべて会話主体の授業ができるようになります。つまり、教師主体で学習者が教師の説明を聞くという受け身の学習時間が少なくなり、学習者自らが積極的に発話したり、漢字を読んだり書いたりするという学習者主体の授業が可能になります。

開発当初から早10年の月日が経ち、コンピューター技術は飛躍的に進歩し、現在ではオンラインの漢字サイトや漢字辞典が数多くあります。ただ、その中には日本語教育の視点で作られていないものも数多くあり、日本語学習者は絶えず効果的に学習でき、かつ信頼できる教材を探しているのが現状ではないでしょうか。

今回10周年を記念してKanji aliveを大幅に改善しました。従来通り、音訓、部首、部首の画数および漢字の総画数、小学校の学年および教科書による検索はもちろんできます。多くのリクエストにお応えして、漢字そのものを入力してQuick search modeで検索できるようにしましたし、いろいろな検索条件を組み合わせたAdvanced search optionの検索も可能にしました。例えば、総画数と部首名 (例:6画+にんべん ks:6 rjn:ninben)、総画数と部首の画数 (例:6画+部首2画 ks:6 rs:2)、音読みと総画数(例:キュウ+6画 on:kyuu ks:6)、音読みと部首名(例:キュウ+にんべん on:kyuu rjn:ninben)などの組み合わせ検索です。また従来のローマ字入力の他に、ひらがなとカタカナでの入力も可能にしました。

書籍の漢字辞典が使えるようになることが大切なので、オンライン教材を使わないように指導なさっていらっしゃる先生方もいらっしゃるようですが、Kanji aliveの検索方法と検索結果の表示は書籍の漢字辞典のようですので、Kanji aliveを使うと書籍の漢字辞典の使い方を学ぶことができます。その上、書籍の漢字辞典のようにページ数を覚えてページを繰る必要ないので、即座に探している漢字にたどり着くことができます。

また、検索結果にいくつかの漢字が表示される場合に、それらの漢字を部首の画数または漢字の総画数で分けて表示することもできるようにしました。そして、各画数内で、漢字は康熙字典で決められている部首の順に表示されます。その結果、部首が絶えず学習者の目に触れるようになり、今まで以上に部首への関心も高まることと思います。

各漢字についての情報は、従来のものに加え、漢字を四種類のモデルフォント – 教科書体明朝体ゴシック体丸スタイル – にさらに新しく四種類 – 篆書体行書体勘亭流体すずむし – を加えて表示してありますので、学生は違うフォントに馴染むことができるようになりました。また、研究社のルミナス英和和英辞典の各漢字にリンクできるようにしましたので、学習者が各漢字の用例をより多く学ぶことも可能になりました。

従来同様、漢字導入前には、 Kanji aliveに ある二つのPDFファイル “Introduction to Kanji“ と “214 Traditional Radicals” を学生各自に読んでくるようにご指導ください。漢字の歴史、筆順の基本原則、部首などについて授業時間を使わずに教えることができます。

Kanji aliveは、大学で使用することを当初の目的として開発されましたが、小学校から高校までの日本語学習者、日本にあるインターナショナルスクールの日本語学習者、また海外の日本人学校にいる日本人の子弟にも使っていただけると思います。 その場合は、学生のレベルに応じて先生方がわかりやすい説明を補足してくださるとありがたいと思います。また、成人の日本語学習者も、自分の都合がいい時にKanji aliveを使って独学で漢字を学ぶことができます。

先生方ご自身の教育機関で Kanji aliveをご使用になる場合、そこの教科書の課毎の検索が学習者にとって一番便利だと思いますので、教育機関名またはその教科書名を Kanji alive の検索条件カテゴリーに入れるカスタマイゼーションも行っております。詳しくは、以下のカスタマイゼーションを参照してください。

日本の小学校で教えていらっしゃる先生方へ

最近は小学校でのタブレットやスマートボード(電子黒板)の使用が増えて来つつありますので、日本の小学校で教えていらっしゃる先生方には、Kanji alive を漢字教育に使っていただけるのはもちろんですが、コンピュータ教育にも使っていただけると思います。

国語の授業で漢字教育補助教材として Kanji aliveを使っていただく場合は、漢字そのもの、または訓読みで検索すれば、生徒に見せたい漢字がすぐ表示されます。また学年で検索しますと、その学年で学ぶすべての漢字が部首、部首の画数および漢字の総画数で分類されて表示されます。部首の成り立ちの動画にご自分の説明を補足していただければ、生徒の漢字理解が一層深まるのではないでしょうか。

コンピュータ教育の場合は、漢字学習を最終目標として、そこに至るまでの過程つまりウェブサイトへのアクセス、かな入力とローマ字入力の仕方などを教えることができると思います。まず、ウェブサイトへのアクセスの仕方を教え、実際に Kanji aliveに アクセスさせます。次に、見つけたい漢字を検索するためにかな又はローマ字入力が必要なので、かなとローマ字がちゃんと打ちこめるように指導することができます。最後に、自分が探している漢字が表示されたら、その漢字に関する必要な情報すべてを使って漢字学習をさせることができます。このように教えると、コンピュータ技術、かなとローマ字の入力の仕方、漢字学習という三つの学習が細切れにならず、一つの大きな目標を達成するために総合的に教えることができるのではないでしょうか。

このほかにも使い方のアイディアがありましたら、お知らせください。問い合わせにつきましては、Feedbackのページをご覧ください。

重要事項

1. Kanji alive は英和辞書ではありません。Kanji alive には、英語の意味で漢字を検索する便利な検索機能がありますが、辞書として開発されたものではありません。ですから、「電話」 (denwa、telephone)のような熟語を検索結果として得ることはできません。英語による漢字の意味で検索した場合、熟語ではなく、その意味を有する一つの漢字だけが検索結果として表示されます。

2.  漢字を書く時の重要な三つの「止め、撥ね、はらい」を教えるために、Kanji alive では ペンによる 手書きの漢字と教科書体を表示しています。 学習者がこの手書きの漢字と教科書体を見比べて、漢字の書き方がきちんと確認、学習できるようにしてあります。

教科書体フォント ペンによる手書き
Calligraphic font Written with a pen

Detail Viewで手書きの次にある 教科書体フォントは、 三つの基本「止め、撥ね、はらい」の違いを明瞭に示しています。(「止め、撥ね、はらい」について詳しくは、漢字について」ページにある PDF ファイル「Introduction to Kanji」を参照してください)。

動画で表示されるペンによる手書きは、日常生活で見られる手書きで「止め、撥ね、はらい」がどのように書かれるかを表示しています。学習者が漢字を書く場合は、こちらの手書きをお手本にするよう指導してください。


どうして書道のような筆書きの漢字の動画を使用しなかったかという質問を何回か受けたことがあります。理由は以下の通りです。
書 道を知っている者は、書道の筆書きの漢字を見せることによって、「止め、撥ね、はらい」が明瞭に示せると思いがちですが、書道の知識がない学習者にとって、その違いを認識するのは、難しいようです。もちろん、前もって書道の筆の運びが「止め、撥ね、はらい」を表していることを教えれば学習者も理解できる でしょうが、学習者が筆書きの漢字を目にすることは少ないですし、実際に学習者が日常生活で使用するのは、ペンや鉛筆であり、毛筆ではありません。ですから、 Kanji alive では、書道の筆で漢字を書く動画は使用しないことにしました。そのかわり、三つの違いを明瞭に示している教科書体フォントを採用し、ペンによる手書きの漢字をお手本として示すことにしました。


3. データベースには合計1235字 の漢字が登録されています。

より多くの漢字がデータベースに追加されればされるほど、Kanji alive は便利になると考えがちですが、1000 字以上の漢字を習得した上級レベルの学習者 は、一画ずつ筆順を追って漢字を学ぶ必要はありません。ですから、Kanji alive の機能を最大限に活用できるのは、初級および中級レベルの学習者だと思います。そこで、Kanji alive に登録する漢字の総数は、常用漢字 1945 字ではなく、1235字 とすることに決めました。1235字になった理由は、下記の通りです。

  • 日本の小学校 6 年間で教える 教育漢字は 1006 字である。
  • 国際交流基金主催の日本語能力試験N2で扱われている漢字は 約1000字 である。
  • シカゴ大学では、卒業する学生に出すCertificate of Proficiency in Japanese のレベルは、国際交流基金主催の日本語能力試験N2と同レベル、またはそれ以上に設定されている。
  • シカゴ大学の日本語プログラムでは、三年の終わりまでに約1000字の漢字の書き方を学ぶ。
  • 教育漢字に含まれている漢字でも、日本語能力試験N2に含まれていないものもあり、またその逆の場合もあります。このため Kanji alive のデータベースには、教育漢字および日本語能力試験N2のすべての漢字を登録することにしましたので、1235字の漢字が登録されました。

ここに、Kanji aliveに入力されている全ての漢字が画数別で表示したリストがありますので、ご覧ください。

4.  漢字の書き方を覚えるためのヒントは、語源を示したものではありません。このヒントは「2001 Kanji」(Joseph R. De Roo、凡人社、1980、現在絶版)に基づいて作られ、許可を得た上で使用しています。しかし、Kanji aliveのためにローリー日比野晴美と中川原カメリアが大幅に改訂しました。部首の意味も多少拡大したり、部首を分解したりしてヒントを作っていることもあります。

カスタマイゼーション

いろいろな教育の場でそこの必要に応じて Kanji alive を使っていただけるよう、カスタマイゼーションを無料で行っています。たとえば、貴校の学習者が貴校使用の教科書の課の番号を入力すると、その課で学ぶべき漢字がすべて検索結果として表示されるようにすることができます。 ご希望、ご質問等ありましたら、Feedbackページから電子メールでお問い合わせください。

リクエストにより現在検索可能になっている教科書は以下の通りです。

  • 加納千恵子、清水百合、竹中弘子、石井恵理子著 『基本漢字500』、凡人社発行
  • Macquarie University JPN111 (「井」、「頁」、「又」との字は、教育漢字でも能力試験2級までの漢字でもないため、 Kanji aliveのデータベースに入っていませんので検索結果には現れません。)
  • Hiromi Peterson, Naomi Omizo著『Adventures in Japanese』第1巻〜4巻、Cheng & Tsui Company 発行 (第四巻の7課の「嬉」は、教育漢字でも能力試験2級までの漢字でもないため、Kanji alive のデータベースに入っていませんので検索結果には現れません。)
  • 坂野永理、品川恭子、坂根庸子、大野裕、渡嘉敷恭子著『げんき』、ジャパン・タイムス発行
  • AP日本語試験の漢字リスト
 20のセクションに分けてあり、各セクションに20字あります。教科書検索から”AP Kanji” を選択し、セクション番号を入力してください。検索したい漢字がどのセクションに入ってい るかのリストは、こちらでご覧になれます。
  • 坂野永理、池田庸子、品川恭子、田嶋香織、渡嘉敷恭子著『KANJI LOOK AND LEARN』 ジャパン・タイムス発行(27 課の「吉」の字は、教育漢字でも能力試験2級までの漢字でもないため、Kanji alive の データベースに入っていませんので検索結果には現れません。)
  • 加納千恵子、清水百合、竹中弘子、石井恵理子著 『Intermediate Kanji Book Vol. 1』、凡人社発行  (3課の「訂」「援」、4課の「裕」、LR1の「拍」、7課の「併」「睡」、9課の「撃」「振」「煮」、LR2の「被」「購」の字は、教育漢字でも能力試験2級までの漢字でもないためKanji alive の データベースに入っていませんので検索結果には現れません。)
  • 岡まゆみ、筒井道雄、江森祥子、花井善朗、石川智著、『上級へのとびら』、くろしお出版発行 (以下の読みのみの漢字13字:7課の「躍」、9課の「環」、10課の「及」と「徴」、11課の「江」、12課の「隠」「丈」と「飾」、13課の「憶」、14課の「剣」と「雰」、15課の「恵」と「寿」は、教育漢字でも能力試験2級までの漢字でもないためにkanji aliveのデータベースに入っていませんので検索結果には現れません。)

2 thoughts on “先生方へ

    1. Harumi Lory Post author

      富田様、

      ご返事が遅れてすみません。

      Kanji aliveのウェブページ http://kanjialive.com の一行目にある a web application (http://app.kanjialive.com)をクリックしていただくか、http://app.kanjialive.com をブックマークしていただくかすれば、ご利用いただけます。また、使用方法については、動画がありますので、https://www.youtube.com/user/kanjialive をご覧ください。また、実際にアプリケーションを使用中に検索方法がわからない場合には、Infoをクリックすると、Quick Referenceが現れます。

      ほかにも何かご質問がありましたら、いつでもお問い合わせください。

      Reply

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